作ってはいけない遺産分割協議書

2018年7月25日

僕ら司法書士は代書屋と呼ばれていた時代があります。

 

代わりに書類を作るだけの人くらいのニュアンスがあるからなのか、ベテラン司法書士に言うと気を悪くされるかもしれないので、お気をつけ下さい。

 

確かに、書類を作成する技術は他より長けていると思います。

 

が、気を悪くするのは、書類を作成する前提として、そのような法律行為があったのか?そんな事実があったのか?という実体を見ている、そこが重要なのだよということの自負があるからです。

 

そんなことを思い起こさせる案件が続きました。どちらも遺産分割協議書について。

 

つい昨日、行政書士の先生がご自身で作成した遺産分割協議書を使用して相続登記をして欲しいというご依頼を受けました。

 

書類を預かる際、気になっていることがあってという前置きで、この中の一筆の土地がどうも生前に売買されていたみたいなんです(登記はしてないけど)、どうしたらいいですか?という質問。

 

ここで立ち止まれるのは、さすがです。

 

遺産分割協議というのは、遺産を分ける話し合いです。

 

生前に売買されていた土地は既に遺産ではないのですから、遺産を分けるという前提が崩れているんですね。

 

であれば、その土地は相続登記すべきではないっていう結論になります。

 

なお、知らずに相続登記をしてしまった場合、本来間違った相続登記をやり直して売買の登記をすべきとなりそうですが、相続登記をしてしまった人を登記義務者として売買の登記をしていいよという先例があります。

 

知らなかったなら仕方ないよね、最終的に今の権利者のところに移るならいいよっていう価値判断かな?

 

でも知ってたならすべきでない。

 

実体は、既に遺産じゃないんだから。僕らは代書屋じゃないんだから。

 

 

 

もう1つは、説明しやすくするため、AB夫婦にCDという子どもがいる家族で、Aが先に亡くなり数年後にBが亡くなったというケース。

 

Bが亡くなる前の日付で、Bが参加したような、しかもBが押印する遺産分割協議書は作れないのか?という質問というかお願いというのかがあった。

 

もう一度言うが、遺産分割協議は遺産を分ける話し合いである。

 

遺産分割協議書はその話し合い(法律行為・意思表示)の結果をまとめた書類である。

 

Bが既にこの世にいない今、Bがどのような意思表示をしたか分からない今、そんな遺産分割協議書は作れません、作るべきではないということでお断りさせて頂きました。

 

ましてBの印鑑を押すなんて怖いですね。

 

僕らは代書屋ではないんだから。

 

作る技術があっても、作ってはいけない、作るべきではない書類ってあるものです。

 

不動産登記法という法律は手続法です。

 

僕ら司法書士が気にするのは、まずその前提となる民法(実体法)なんですね。

 

 

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プロから正当な評価

2018年7月19日

昨夕、事務所を閉める直前くらいに、お世話になっている行政書士の先生からメッセージが届く。

 

そのまま、うちの司法書士たちの前で読み上げる。

 

ここでは一部省略して、「定住者」というビザが取れたこと、初回の変更で異例の3年という許可が取れたことの報告があり、

 

複雑な相続手続きを丁寧にやり遂げたこと、その結果、生活の安定が得られたことが評価されたことが一因であるということ。

 

迅速な相続手続きについてとても感謝してくれていること。

 

これらを読み上げました。

 

 

 

今回の依頼者さんは中国の方。夫の母国である日本に来られてすぐに夫が亡くなり、先のビザを取得することになった。

 

その専門家である行政書士の先生が、まずは相続、ということで司法書士の私たちと税理士先生に声をかけて下さった。

 

ビザ取得のためにはこの日までに相続登記をして欲しいというのが、私たちに課せられたミッション。前提として、特別代理人選任申立付き。

 

逆算してスケジュールを組んでいく。

 

これらを全て私たちを信頼して任せてくれました。

 

任された以上は、それに応えなければならない。

 

事務所内で、都度、役割分担し、短時間で戸籍収集、裁判所提出書類・登記書類の作成、関係者への押印、文字通り走り回りました。

 

外からは分かりませんが、私は知ってるんです。

 

うちの司法書士たちが、このミッション実現のために汗をかいてくれたことを。

 

どうしても感謝を伝えてもらえるのは、所長である私。

 

でも、この仕事が依頼者さんのお役に立てたことを知ってもらいたい。

 

任せてくれた行政書士の先生がとても感謝してくれたことを知ってもらいたい。

 

プロがプロの目で正しく評価してくれたことはとても嬉しいんです。

 

 

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