抹消登記を求める裁判が結審。

2020年7月21日

今日は、朝一、金沢地裁へ。

 

ロビーで依頼者さんと待ち合わせ。

 

開廷20分前。ロビーのソファーで、ファイルを手渡して、簡単に説明。

 

「裁判官が訴状を陳述しますか?と聴いてきたら、ハイと答えてくれれば大丈夫です」

 

少し緊張しながらも、「わかりました」と依頼者さん

 

約1年前に話は遡る。

 

10年ほど前、お父様から不動産を相続した。そのときはあまり気にも留めていなかった。

 

その中の不動産を売却することになった。

 

不動産屋さんを介して、土地に賃借権が残っていることが判明。

 

不動産を購入する側にとって、登記簿上とはいえ、賃借権が残っているのは気持ちよくない。不動産屋さんにとっても、たぶん許されない。

 

依頼者さんが、賃借権の相続人さんに話を持っていくが、前に進むことはなかった。

 

新たに仲介することになった不動産屋さんを介して、当職に声がかかる。

 

かつての賃借権の相続人さんも亡くなっており、更に次の世代になっている。

 

依頼者さんと一緒に、賃借権の現相続人さんのお一人に会いに行く。

 

賃借権の抹消にご協力頂けるということだが、他の相続人のご意向は不透明ということ。実際、ご協力は得られなかった。

 

実印の押印と、印鑑証明の取得のハードルが高かった。

 

協力することで何かしらのメリットがあればよいが、特にない。面倒だし、気持ちのいいものではない。

 

皆さんのご先祖さんがやり残した登記義務を果たしてください、と言ってもご理解頂けないでしょうね(実際は言っていない)。

 

仕方ない。次善の策。

 

それが、裁判である。

 

昨年末、訴状作成代理のご依頼を正式に受ける。

 

その前に、裁判やってくれません?と弁護士さんにあたったのだが、提示された見積と依頼者さんのご意向が合わず断念。

 

司法書士は140万円までの訴訟であれば、依頼者さんに代わって簡裁に立てる。

 

しかし、それを超える訴訟では代理人になれない。

 

しかし、全くお役に立てなくなるかと言えば、そうでもない。

 

訴訟代理人にはなれないが、訴状等作成代理人にはなれる。

 

何が違うのか?

 

本人さんが裁判所に立つが、提出する書類(訴状等)を司法書士が代わって作成するのである。

 

相手方(被告)と高度なやり取りがあるケースではお薦めしないが、今回のように結論がはっきりしているものであれば、その方法もありだと思う。

 

今回は、登記簿上、賃借権が存続期間を満了していて抹消されていることがはっきりしている。

 

コロナの影響で、最初の期日が2日前になって延期になるというハプニングもあった(これにより、再度被告たちに送達が必要になり、数万円余分にかかった)が、

 

本日、ようやく最初の期日を迎える。

 

「訴状を陳述しますか?」裁判官

 

「ハイ」と頷く依頼者さん。

 

予定通り、相手方全員欠席してくれて、最初の期日を持って、訴訟は終了。結審。

 

判決はお盆明け(長い)。

 

その後、被告全員に判決書が届いて、2週間後確定。

 

確定後、漸く、賃借権抹消登記が申請できる。

 

依頼者さんは、時間がかかったが、決着の目途がたったので安心しましたと仰っていた。

 

私もホッとした。

 

午後からは、不動産売買の決済立会である。オーソドックスな司法書士の仕事に戻れる。

 

 

 

~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ相続ブログ~

訴訟経済と簡易裁判所

2020年2月27日

今日は、とある裁判の第4回期日。そして終結。

 

昨年後半から訴訟が続いている。

 

司法書士は、140万円までの簡易裁判所管轄の訴訟であれば代理人になれる。

 

とはいえ、訴額は50万円に満たないような案件がほとんどだ。今回は、20数万円。

 

事務所に戻る、やはり20数万円の売買代金を回収して欲しいという相談の電話がなっていた。

 

基本、この中から報酬が出るわけだから、どう考えたって、ビジネス的に成立していないことは明らかだ。

 

本日も、相手弁護士から何でこんな訴訟受けるの? 法律相談に来られたらお断りする案件でしょ? と。

 

訴訟経済という言葉がある。

 

大学時代に勉強した気がする。

 

要は、裁判所(紛争解決機関)という限らた資源を有効に活用するには、訴訟は効率的であるべきということ。

 

訴訟係属しても、もたもた、だらだらしない。

 

係属前でも、裁判で解決できないものは裁判所に持ってくるな。というところもある(だろう)。

 

なら、こんな小さな紛争、裁判所に持ってくるなよ。証明が困難な、係属したらもたもたするようなもの、裁判所に持ってくるなよ。という雰囲気があるやに思う。

 

まあ、大きな声で言っちゃうと、簡易裁判所の存在理由がなくなっちゃうよね。

 

では、

 

若干冷ややかな視線に耐えながらも、引き受ける理由は?

 

依頼者さんの熱量でしょうか。

 

報酬を引くと、ほとんど手元に残らない。それでも、どうしても我慢できないという熱量。

 

今回は、仕事をしたのに、その報酬が払われないというものでした。

 

仕事というものは尊いものだと思っています。

 

自らの貴重な時間と労力を提供する訳ですから。

 

なので、そういうご依頼は受けてしまう傾向がありますね。

 

 

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