子どもが生まれてからというもの、土日も7時前には起きています。
この土曜日の朝、7時ごろに私のスマホが鳴りました。
電話にでると、「〇〇さんが△△病院に緊急搬送されました。病院が金氏さんにも来てもらえないか?」と言っています。
〇〇さんは弊所が受任している被保佐人さん。電話は〇〇さんが入所している施設の担当者さん。
△△病院はうちから10分ほどで行ける総合病院。
すぐに駆けつけると、救急の処置室に通される。
私が〇〇さんにお会いするのは、このときが初めてだった。〇〇さんは既に人工呼吸器を付けられ会話はできない状態。
弊所がリーガルサポートに受任を求められたのが1か月ほど前。成年後見等法定代理人は家裁で選任され、2週間で確定し、その後約2週間で代理人の登記簿謄本が取得できるようになる。この登記簿謄本が代理人の資格証明書になり、金融機関等と契約関係ができるのである。
この登記簿謄本がとれたのがほんの数日前。被保佐人さんの施設で通帳等を預かったのが2日前。本来ならお会いするのだが、コロナや本人さんの体調もあって実際にはお会いできなかった。通帳を保佐人が使用できるよう手続きをとったのが前日である。
〇〇さんは、末期癌を患っていた。延命措置を希望するか?の問を受けるが、保佐人にそれを決める権限はないのでその旨を伝えた。施設の方が生前からその希望はない旨を医師に伝える。
〇〇さんに訪れる尊厳死は、数日の単位なのか?数週間の単位かは〇〇さんの生命力による、否、それは数時間かもしれないと伝えられる。
つまり、病院では痛みを和らげる以外は積極的な治療を施さないとの方針で入院が決まる。
病院の入院の契約は保佐人の代理権の範囲に入っていたので、〇〇さんが病室に移るのを見届けた後、控室で契約書にサインをしていく。
契約書が書けた旨伝えに行くと、看護師さんたちの様子が慌ただしくなっていた。
暫くすると、医師が説明に来られた。
急変して、たった今亡くなられました、と。本来なら立会があるとのことだがコロナの関係で病室には入れず、控室で死亡時間を告げられた。
今度、病院に求められたのは、ご遺体の引き取りに関してだ。引き取りと言ってもそれは葬儀の方法に関わってくる。
保佐人のこれらの権限があるのか?
法的には、否、である。
また、実は、〇〇さんには特殊な事情がある。親族は兄弟のみで、諸事情から積極的なご協力が得られない。それで保佐人選任の申立も市長申立ての方法がとられていた。
市の担当者さん(実際は休日のため当番)と相談して、弊所がすることに。
法的にというより、それが最善で、緊急的で。
病院から紹介された葬儀屋さんと連絡をとり、ご遺体の引き取りにすぐに病院に来てくれた。
引き取りが決まってから1時間も経っていないかったと思う。
誰の目にも触れないような裏口にエンゼルケアが施された〇〇さんは看護師さん2人によって運ばれ、裏口に待っていた葬儀屋さんの車に納めれた。車が見えなくなるまで頭を下げている看護師さんたち。
大変なお仕事ですね、と声をかけると、コロナでなければもっと丁寧にできるのですがと申し訳なさそうな答えが返ってきた。
葬儀屋さんの車の後ろを自車で付いていき、葬儀屋さんで火葬の打ち合わせ。
〇〇さんは生活保護を受けていた。費用は最低限のもの。このことは市とも打ち合わせをしていた。〇〇さんが遺された預金の中からまず病院、施設の費用が払われる。残ったお金で葬儀代が払われるのだ。足りない部分があれば、その部分だけ生活保護で支払われることになる。
葬儀屋さんはとても慣れたように、事務的に手続きをしてくれた。
1日のうちにここまで進むとは思っていなかった。朝早く呼び出された私は正直面倒くさいなと思っていた。休日のこんな早くに、予定だってあったのに。待っているときも少しイライラしていた。
しかし、〇〇さんのご遺体を前にしたとき。ご遺体に寄り添っていた看護師さんを見たとき。事務的に(いい意味で)ことを運んでいく葬儀屋さんを見たとき。
とても恥ずかしくなりました。
~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ成年後見ブログ~