「家を売りたいって人がいるんやけど本人確認してくれませんか?」
お世話になっている不動産屋さんから。
話を聴くと、売主さんは任意後見契約を結んでいるらしいが、そんな場合でも売れるの?という不安。
なるほど、もっともな心配。
任意後見はその名の通り後見、当然、成年後見制度が思い当たる。
成年後見人がついているということになると、その人の判断能力は低く、その人が不動産を売却するということはできない。
もっとも成年後見人が必要と判断すれば可能である(自宅で家裁の許可が必要なケースあり)。
ここで任意後見の説明をしよう。
先の成年後見制度は、自身の判断能力が低下したときに、家族等が家裁に申し立てる。この時点で判断能力が低下しているので、この人に成年後見人をやってもらおうという本人の希望は叶えられない可能性がある。
そこで、まだ判断能力が十分なときに、将来後見人になって財産管理をしてもらいたいという人と契約を結んでおくのである。
これを任意後見契約という。
公証人役場で公正証書の形で作成する、法律的にもしっかりしたものである。
ここでポイントが1つ。
任意後見契約は公正証書で作成する(締結する)が、この時点ではまだ効力が発生していないということ。
後見人となる人が、その人の判断能力が低下したと判断したときに、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立をし、監督人が選任されたときに初めて効力が発生します。
つまり、監督人が選任されるまでは、全く契約を結んでいない他の私人と何ら変わりはないということですね。
では、今回は?
面談場所に向かうと、そこには、売主さんと任意後見契約を結んだ行政書士の先生も一緒にいました。
念のため、任意後見契約書を拝見。代理権の範囲を確認。
あくまでも、念のため。
そう、今回は、まだ監督人を選任していない段階だったんです。
であれば、シンプルに、その売主が本人に間違いないか? その物件を売却する意思があるか?を確認する。通常の本人確認です。
特に、その本人確認に問題はなく、私の役割は終了。
数か月後、不動産売買の決済立会をすることでしょう。
こうやって、本人確認に慎重を期してくれる不動産屋さんは有難いですね。
丁寧なお仕事だと思います。
司法書士は不動産登記はもちろん、かかる任意後見契約締結のお手伝いもできます。お気軽にご相談ください。
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