とある金融機関さんから質問がきました。
お客様に任意後見契約を検討されている方がいらっしゃるとのこと。
任意後見契約を説明する前に成年後見人制度を説明しますね。
認知症等で判断能力が低下した場合、その方に代わって財産管理をする法定代理人を家庭裁判所で選任する制度が成年後見人制度です。
この制度は、自身の判断能力が低下した後に申請されるため、自身がお願いしたいと思っていた人が選任されるわけではありません。
したがって、判断能力が低下する前に、財産管理をお願いしたい人と契約するのが任意後見契約です。
成年後見人は法定代理人であり、その代理権の範囲を決める必要ないんですが、任意後見契約では代理権の範囲を契約書内で明らかにしておきます。
逆を言えば、契約書に書かれていない代理権を行使することはできないということです。
では、質問の内容ですが。
分かりやすくするために登場人物は夫Aと妻Bとします。
Aさんは自身が判断能力が低下するかもしれないと思い、今のうちに任意後見契約を希望しています。さらに、自身がそうなったとき、Bのことも心配である。
したがって、自身の任意後見人にBの成年後見人選任申立をお願いしておくことができるか?すなわち、任意後見人の代理権に配偶者の成年後見人選任申立を加えることができるのか?ということである。
ありそうな話ですが、これまで考えたことがなかった。
家庭裁判所にもちょっと聞いてみたんですが、明確な回答をもらえませんでした。
仲間の司法書士たちにも当たってみました。一緒に考えてくれました。答えも見つけてきてくれました。
では、結論から言いますと、可能です。
なぜなら、任意後見人の代理権の範囲は、財産管理に関する事務に限定されていないからです。
したがって、任意後見契約書の代理権目録に「妻Bの法定代理人開始の審判の申立てに関する事項」を記載しておけばよいということになります。
Bさんの年齢によっては、今のうちから補助人・保佐人選任の申立しておくのも一つの手かなとは思いますが、夫Aさんの気持ちもありますからね。
気持ちに沿った方法が見つかってよかったですね。
~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ成年後見ブログ~