認知症等の判断能力が低下した場合、本人に代わって財産管理をする法定代理人として成年後見制度が利用されています。
この場合、ご家族等が申立人になるケースが多いですね。
その申立書類の作成代理を担っているのが私たち司法書士です。
ご家族の希望によっては、そのまま成年後見人候補者に挙げられることもあります。
成年後見人は本人が判断能力が低下した場合に申立てられるわけですから、そこの本人の希望というものが反映していないことが多いわけです。
そこで、まだ判断能力が十分にあるうちに、いざその時が来たら後見人になる人と事前に契約を交わし、成年後見人と同じはたらきをしてもらおうというのが任意後見契約です。
この契約書は公証役場で完成されます。
そして、財産管理という重要な行為を任せる委任契約であり、そこには高度の信頼関係を前提としています。
また、その性質上、長いお付き合いになる長期的な契約です。
この契約を公証役場で交わしますと、任意後見契約の登記が、東京法務局に公証役場の嘱託でされます。
先ほど申し上げた通り、長期的な信頼関係を前提とした契約ですから、場合によっては事情の変化が起きる可能性があります。
今回、この任意後見契約を解除したい、そして別の方と契約をやり直したいというご依頼がありました。任意後見契約は亡くなった後の事務も任せる死後事務委任契約も同時に締結しておくのが一般的で、この死後事務委任契約は相続財産に影響を与えることから遺言も一緒に作成することが多いのです。
したがって、今回、この公正証書遺言の撤回と同時に、任意後見契約の解除手続きをさせて頂きました。
公証役場で別の方と任意後見契約書を交わします。
本人さんは以前の方と任意後見契約を解除するので、公証人はこの解除通知書も作成します。
あまり多くない案件なのか?公証人や事務員さんもちょっと手探り感。
この解除通知書の作成は全ての1番最後になり、
まず、同じ内容の解除通知書を5枚本人の前に並べ、この5枚全部に住所と氏名を自署させます。
えっ? 5枚も。。かわいそう、と心の声。
3枚は登記に使います。そう、任意後見契約を解除すると登記が必要になります。この場合は、公証人の嘱託ではなく、本人若しくはその代理人司法書士が行います。
そして、本人に公証人の前で起立が求められ、本人は、公証人に手渡された紙に書かれた文字を読み上げます。いわゆる宣誓供述です。
公証人も自分で求めておきながら、かなり気まずい空気が流れます。
これ、いる?? 再度、心の声。
この3枚の解除通知書を預かり、司法書士が以前の後見人に内容証明郵便を送ります。内容証明郵便は必ず同じ内容の書面3通が必要なんですね。
で、私も、この3通を翌日郵便局に持ち込みました。
「これ使えません」と郵便局員さん。
「本人さんが押印したものと一緒の印鑑で割印してください。」
内容証明に割印が必要なのは、なるほど司法書士には常識です。
しかし、公証役場で作られたものに改めて本人さんに割印を求めるのもどうか?と考えたが、それしかないということで再度本人さんに印鑑をもらう。
この内容証明を配達証明付きで送付し、この配達証明もまた登記の添付書類となる。
東京法務局のサイトに入り、申請書をダウンロードし、加筆して申請。
登録免許税はゼロ。
いい経験ができました。
本人さんのホッとした顔も印象的でした。
~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ任意後見契約ブログ~