相続放棄と特別受益証明書と相続分譲渡証明書

2019年8月27日

「相続放棄するよ」

 

遺産分割協議の場面では、よく耳にする言葉である。

 

”相続放棄”とは、法律的は、家庭裁判所に申述して初めて認められるもので、3か月という期限もある制度である。

 

が、

 

「相続放棄するよ」という言葉は、これを指していないことが多い。多くの場合、「何も相続しなくていいよ」くらいの意味である。つまり、自身は何も相続しないという形で遺産分割協議書の作成に応じるということである。

 

 

先日、HPからの相談者さんがご来所。

 

最初のご相談は、「特別受益証明書」を使って相続登記ができないか?というもの。

 

意味するところは、「相続放棄するよ」に近い。

 

何かというと、生前に特別に利益を受けているから私には相続する分がないということでいいです、という書面である。

 

この書面を使って、実質、相続放棄と同じ効果を利用して相続登記がされていた時代があった。

 

この方法、今はほぼ使わない。(使ったことがない)

 

法務局も否定的だし。

 

というのも、相続放棄と同じ効果を利用している訳だが、実際、本当に特別の利益を受けていないことも多く、実体に沿わない書類を作るべきではないというのが背景にある。

 

逆に言うと、実体に合っていれば利用して構わない訳だが、なかなかその証明は難しいし、何も相続しない形の遺産分割協議書で足りるのでわざわざ感は否めない。

 

この辺のことを説明すると、「私もそう思います。逆の立場で、特別受益があったでしょって言われたらいい気がしないですもんね」とご理解下さいました。

 

 

次に、

 

「ネットでこんなの見つけたんですけど」と、差し出されたのは、「相続分譲渡証明書」なるもののコピー。

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

(やったことない。が、どこかで、試験勉強あたりで、見たことがあるような)

 

面談スペースから、聞き耳を立てているであろう2人の司法書士に向かって

 

「相続分譲渡証明書について調べて!!」

 

暫くして、パートナー司法書士が面談スペースに近づいてくる。

 

「相続分譲渡証明書使えるようです」と回答。

 

相続分譲渡証明書とは、自身の相続分を第三者(他の相続人も含む)に譲渡するというもの。

 

譲渡した者は、相続から離脱することになる。

 

そのニーズは、

 

相続人が多くて遺産分割協議に時間がかかるような場合、譲渡する者は、協議にかかわる必要はなくなり、譲り受けた者からも協議する人が減るというメリットがある。

 

協議に争いがあるようなケースでは、争いに巻き込まれたくないという人は、そこから早々に離脱できる。

 

先の「特別受益証明書」と違って、相続人の意思で譲渡する訳だから実体にも沿っている。

 

相談者さんのおかげで、一つ賢くなりました。

 

 

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