電話をかける。意気揚々と。
「ご依頼を受けていた相続登記が全て完了しました」
電話の向こうで、依頼者さん驚きの声がする。
続いて、近い将来売買が控えている不動産屋さんに。今度はホッとしたような声。
話は約1か月前に遡る。
頻繁にお付き合いがある訳ではなく、1.2度不動産売買の決済で顔を合わせた不動産屋さんから電話があった。
「韓国籍の相続登記できませんか?」「ネットで調べたら先生のブログが出てきたので」
事務所で詳しく聴くと、
仲介しようとしている物件の所有者さんが在日韓国人の方なんですが、相続登記が済んでいない。お付き合いのある司法書士さんにお願いしていたのだが、前に進まなくなって何とかしたい。
既に受任している司法書士さんの顔をつぶしたくないので、ためらっていると、その先生も引き継ぐことには了承してくれている、とのこと。
そういうことであれば、既に手元にある資料を眺めると、経験からやれそうな気がしたので受任することに。
依頼者さん、仲介さんのご要望は、1にも2にもスピード。勿論、登記が可能ということが前提だが。
ネックは、韓国の領事館を通じて、被相続人の戸籍・家族関係証明が取得できないこと。既に取得している外国人登録原票の国籍欄には朝鮮の文字。
韓国でないから、北朝鮮ということになるのか?というと、そうでもない。詳しくは割愛するが、こことでは地域というぐらいの意味。
ただ、実際、家族関係証明が取得できないという事実は確定している。
法務局と事前に打ち合わせをし、北朝鮮ではなく、韓国法に則って登記をすることを確認。家族関係証明等を取得できない以上、日本で取得できる公的文書で補うことを確認。
被相続人・相続人の外国人登録原票、出生届、被相続人・相続人の住民票。相続人たちの家族関係証明等。
家族関係証明は韓国の領事館、外国人登録原票は法務省で取得。
領事館より日本の法務省の方が遅い。法務省のHPにも1か月の文字。
たまたま依頼者さんが懇意にしている行政書士さんと当職もよく一緒に仕事をする行政書士さんが一致していた。
渉外手続に強い行政書士さん。
話は早い。最速の依頼を何でもなく引き受けてくれた。結果、約2週間という時間で事務所に原本を届けてくれた。
司法書士である当職も代理人として領事館や法務省から先の書面を取得できるが、求められているのはスピード。得意な方に任せた方がいい。
その間に、うちは相続人の皆様に遺産分割協議書に押印を済ませておく。内容は日本のものと特に違いはない。被相続人の戸籍等がない以上、他に相続人がいないことを確定できないので、「私たちの他に相続人はいない」旨の文言は入っているが。
行政書士さんから書類を受け取るや、すぐに登記申請。
既に法務局と打ち合わせも済んでいるので、完了までも時間を要しない。
で、
先週末、相続登記が完了。
先の、意気揚々とした電話となる。
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