戸籍謄本の広域交付開始。でも。

2024年3月5日

相続登記の義務化が近づいています。

 

内容は、亡くなって3年以内に相続登記をしないと10万円以下の過料を課しますというもの。

 

今年(令和6年)の4月1日からです。

 

10年以上も前に亡くなった親の相続登記をしていないよ、という方はすぐにでも過料が課せられるかというとそうでもありません。3年の猶予があります。これから3年のうちに相続登記をしてください。

 

かなり浸透してきているなというのが司法書士の実感です。

 

 

さて、あと1か月を前にこんな制度がしれっと始まりました。

 

相続登記には亡くなった方(被相続人)の生まれてからの亡くなるまでの戸籍(除籍・原戸籍)、相続人の戸籍が必要になってきます。

 

例えば、中能登町で生まれて、結婚して金沢市に本籍を写し、引越しして千代田区に転籍して、終の棲家を軽井沢市としたなんていう場合、これまでは、中能登町、金沢市、千代田区、軽井沢市で戸籍をとらないといけませんでした。郵便でとるのでそれなりに時間がかかります。素人さんだと申請書を書くのも一苦労。

 

それがどの自治体の窓口でもこれらの戸籍がとれるようになりました!!

 

すごい、画期的だ!!!

 

司法書士業務がかなり効率的になる。

 

と、思いきや。

 

えっ、えっ、本人しか取れないの?? 代理人は不可。

 

あほや。誰が考えたんや。

 

正確にはこう。

 

本人なら遠方の戸籍も取れるようになりました。相続で言えば、子どもなら亡くなった親の生まれてから死亡までの戸籍を一つの窓口でとれます。でも戸籍抄本はダメ、戸籍の附票もダメ。廃棄証明もダメ。配偶者は亡くなった配偶者の結婚後の戸籍はとれるけど出生から結婚まではダメ。

 

確かに、配偶者と子どもが窓口に行けばかなりとれる戸籍は多くなったけど、まだまだ不十分。素人の方が市民課の窓口でかなり時間をとられるんじゃないの?それを対応する自治体職員も?

 

絶対、代理人(司法書士)の取得を認めた方がいいじゃん。

 

という訳で、しばらくは、依頼者さんに窓口で取得できるものはできるだけとってきて下されば費用は抑えられますよ。附票とか、廃棄証明とかとれないものはこちらで補いますよ、という案内になりますかね。

 

 

~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ相続登記ブログ~

 

 

 

 

えっ? 中国に帰って公証令を取り直してこい?

2024年2月2日

昨年の11月末、これまで何度かお仕事をさせて頂いた中国人の社長さんから連絡がありました。

 

「中国人の知人で日本で会社設立をしたいのだけれど、近くの司法書士さんに断られたので相談にのって欲しい」というものでした。

 

社長さんの会社で相談者さんと面談。

 

その方は短期のビザで来日しており、6か月ほど前に取得した公証令を持っている。公証令は捺印も署名もあるので、日本の印鑑証明やサイン証明の役割を担う。

 

短期なので日本に住所はなく、日本の印鑑証明は取れない状況。

 

デジャヴ? 同じような案件を半年ほど前に経験している。

 

何でお近くの司法書士さんは断ったのだろう?と思いながら、自信をもって引き受ける。

 

年明けには一旦中国に帰る予定なので何とか12月中に完了させて欲しいというタイムリミット付。

 

以前、印鑑届に添付するサイン証明は3か月以内でないといけないと最寄り法務局で言われたので、来日中の依頼者に日本の公証役場に行ってもらい、印鑑届と就任承諾書に公証人の面前で署名させ、それを認証したものを印鑑証明の代わりとしたのだ。

 

それにはもちろん根拠がある。法務省が出している通達である(平成28年6月28日付け法務省民商第100号民事局長通達法務局長,地方法務局長宛て・改正 平成29年2月10日法務省民商第15号)。

 

タイトルは「登記の申請書に押印すべき者が外国人であり,その者の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することができない場合等の取扱いについて(通達)」である。

 

長いけど誤りがないように。

 

『第3 日本の公証人等の作成した証明書
外国人の署名につき本国官憲の作成した証明書の添付をもって,市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができる場合において,当該外国人の本国の法制上の理由等のやむを得ない事情から,当該署名が本人のものであることの本国官憲の作成した証明書を取得することができないときは,その旨の登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書及び当該署名が本人のものであることの日本の公証人又は当該外国人が現に居住している国の官憲の作成した証明書の添付をもって,市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができる。

なお,署名が本人のものであることの証明書を日本における領事若しくは日本における権限がある官憲が発行していないため当該証明書を取得することができない場合又は日本に当該外国人の本国官憲がない場合には,日本以外の国における本国官憲において当該証明書を取得することが可能であっても,やむを得ない事情があるものとして取り扱ってよい。』

 

要約するとこうだ。

 

外国人のサイン証明の添付によって印鑑証明の添付に代えることができる場合において、その外国人の本国の法制上の理由等のやむを得ない事情からサイン証明を取得できないときは、日本の公証人が作成したサイン証明の添付をもって印鑑証明の添付にかえることができる。

なお、サイン証明を日本国内の領事館が発行していないためサイン証明を取得できない場合はやむを得ない事情があるものと扱ってよい。と。

 

ここで今回の中国人の依頼者さんにあてはめてみよう。うちの解釈ね。

 

日本にある中国の領事館はサイン証明を発行していない。つまり、依頼者は中国の法制上の理由でやむを得ない事情からサイン証明を取得できないときにあたるので日本の公証人が作成したサイン証明を印鑑証明の代わりに添付することができる。

 

この解釈には自信があった。

 

が、申請して数日後。管轄法務局(隣県)から連絡。

 

「本国官憲が発行したサイン証明を提出してください」と。

 

????????

 

「平成28年(29年)の通達に従って申請していますよ」と私。

 

「中国は領事館でサイン証明を発行しているでしょう」と法務局。

 

「領事館が発行しているサイン証明は、日本に住所を有する中国人が中国政府に提出する場合のもので、日本政府(法務局)に商業登記に添付するようなサイン証明は発行していませんよ」と私。

 

ここから数日に渡って平行線の攻防。

 

法務局は頑として、中国はサイン証明を発行していると解釈するので法制上の理由つまりやむを得ない事情にあたらないと譲らない。

 

全く理解できないので、頭がくらくら。

 

「じゃあ、中国に帰って公証令(サイン証明)を取って来いってことですか?」私

 

「そうなりますね」法務局

 

「論理矛盾していないですか?領事館でサイン証明を発行していると言うなら、日本の中国領事館でサイン証明を取ってきなさいとなぜ言わないのですか?」私。

 

・・・・・・・

 

答えない。

 

「これは、〇〇法務局の考えですか? 登記官に代わってください」

 

登記官に代わっても答えは変わらない。できなければ却下するとさえ言ってきている。

 

こちらとしては解釈に自信があるので却下してもらっても構わない。取り下げるくらいなら却下してもらって理由を明示し跡を残して欲しい。

 

ただ、

 

それって依頼者さんにとっては何の利益もないんですよね。

 

登記官は自身の解釈については絶対に折れず、出してきた提案はこうだ。

 

この案件、弊所に相談に来た時点で、公証令は3か月の期限を切れていた。が、この3か月という期限があるという点には争いがあって、以前金沢法務局で問題になった。金沢法務局で期限ありという解釈をしたが、今回の法務局は期限なしという解釈をとるというのだ。

 

つまり、随分前の公証令で構わないからそちらを添付してくれれば登記は通すよとという提案をしてきた。

 

私としては先の解釈を貫きたいところだが、依頼者さんは12月まで完了させてほしいというご要望。

 

私のちっぽけなプライドに固執しても意味はない。で、仕方なく、この公証令を提出すると登記はその日に完了。

 

12月27日。

 

法務局は12月28日までだったので、ぎりぎり依頼者さんの要望に応えることができた。

 

法務局って国家機関ですよね。本来法務局ごとに解釈がまちまちであってはいけないと思うんですよね。そのための通達かなって思うんですが。

 

長い長いブログになっちゃった。

 

 

~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ中国人の会社設立ブログ~

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