住所を知られず所有権移転登記がしたい(離婚)

2021年5月31日

本日、こんなご相談を受けました。

 

離婚を機に財産分与を原因として所有権移転登記や抵当権の債務者変更登記をして欲しいのだけれど、相手に現住所を知られたくないと言う。

 

分かりやすくするために、妻Aが夫Bに自宅の持分を財産分与を原因として譲るという例で説明します。

 

離婚前、登記簿上には、ABの婚姻時の住所が記載されています。

 

離婚してAが既に住所を別に移しているとします。

 

こういう場合、まずAの住所変更登記を入れ、続いてAからBへの持分移転登記をするというのが原則です。でないと登記は通りません。

 

しかし、AがBからDVの被害を受けていたというような事情があった場合、AはBに住所を知られたくないし、知らせるべきではない。

 

しかし、原則のような登記がされてしまうと、簡単にAの住所がBに判明します。

 

よって、特例として、

 

住所変更登記を省略してよいという先例(平成25年12月12日付民二第809号通知)が出ています。

 

法務局には、住所変更登記を申請しないけれど、

 

所有権移転登記に際して、住民票等で住所の変更を明らかにして、「DV防止法」で支援を受けていることを証明する情報を添付します。

 

また、

 

権利証を失くした場合に利用される事前通知は、Aの現在の住所に宛てて通知する。

登記が完了した際に発行される登記完了証に記載される住所は、登記簿上の住所が記載され、Aの現住所は記載されない。

申請後も調べることができないように、登記申請書および添付書類には、閲覧に制限が設けられている。

 

というような配慮もなされています。

 

司法書士は当然ABとお会いすることになると思いますが、これらの守秘義務を厳守することが何より求められていることは言うまでもありません。

 

相手に知られたくないからとこれらの登記に躊躇していた方は、まずはご相談ください。

 

今回のことに限らず、あなたの気持ちを軽くできる方法が見つかるかもしれませんよ。

 

 

~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ離婚ブログ~

離婚時の条件付所有権移転仮登記とは?

2017年12月19日

日曜日、離婚協議に関して、相談にのって欲しい旨、しかも急を要するとのメール。女性。

 

ということで、月曜日の仕事終わりに事務所に来てもらうことに。

 

メールでは、「条件付所有権移転仮登記」について相談にのって欲しいとのこと。

 

これで大よその予想はつく。実際、そうだったのだが。

 

 

離婚を決めたとき、ご自身は家を出ようと決めたそうだ。

 

が、住み慣れた我が家。何より、子どもたちの生活の基盤である。

 

もし、可能ならこれからも住んでいきたいという思いが湧いてくる。夫も了承している。

 

ただ、自宅の名義を夫のまま(持分)ということにはかなりの抵抗を感じる。

 

そこで、まず考えるのは、「財産分与」を原因として夫の所有権(あるいは持分)を妻に移転する。これには贈与税もかからないというメリットもある。

 

しかし、既に住宅ローンを完済していれば問題ないのだが、残っている場合、銀行との契約では移転に承諾を要する旨の特約が付いている。

 

妻に支払能力があれば、借換のように応じてくれることもあるのだが(実際、そういう一連の登記もしたことがある)、通常、妻単独では難しい。

 

そこで、登場するのが、

 

「条件付所有権移転仮登記」である。

 

つまり、住宅ローンの完済を条件に、その完済時に初めて「財産分与」を原因として所有権が移転する。そして、完済前は仮登記で済ませておく。

 

こうしておくことで、銀行の承諾は不要になる。

 

住宅ローンが完済すれば、ちゃんと100%の所有権を取得することができる。贈与税もかからない。

 

これらのことを説明することで、かなり安心して頂けたようだ。

 

離婚時のマイホームの扱いは常に迷いの種ですね。

 

 

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