被保佐人が亡くなった日に保佐人ができること

2022年2月21日

子どもが生まれてからというもの、土日も7時前には起きています。

 

この土曜日の朝、7時ごろに私のスマホが鳴りました。

 

電話にでると、「〇〇さんが△△病院に緊急搬送されました。病院が金氏さんにも来てもらえないか?」と言っています。

 

〇〇さんは弊所が受任している被保佐人さん。電話は〇〇さんが入所している施設の担当者さん。

 

△△病院はうちから10分ほどで行ける総合病院。

 

すぐに駆けつけると、救急の処置室に通される。

 

私が〇〇さんにお会いするのは、このときが初めてだった。〇〇さんは既に人工呼吸器を付けられ会話はできない状態。

 

弊所がリーガルサポートに受任を求められたのが1か月ほど前。成年後見等法定代理人は家裁で選任され、2週間で確定し、その後約2週間で代理人の登記簿謄本が取得できるようになる。この登記簿謄本が代理人の資格証明書になり、金融機関等と契約関係ができるのである。

 

この登記簿謄本がとれたのがほんの数日前。被保佐人さんの施設で通帳等を預かったのが2日前。本来ならお会いするのだが、コロナや本人さんの体調もあって実際にはお会いできなかった。通帳を保佐人が使用できるよう手続きをとったのが前日である。

 

〇〇さんは、末期癌を患っていた。延命措置を希望するか?の問を受けるが、保佐人にそれを決める権限はないのでその旨を伝えた。施設の方が生前からその希望はない旨を医師に伝える。

 

〇〇さんに訪れる尊厳死は、数日の単位なのか?数週間の単位かは〇〇さんの生命力による、否、それは数時間かもしれないと伝えられる。

 

つまり、病院では痛みを和らげる以外は積極的な治療を施さないとの方針で入院が決まる。

 

病院の入院の契約は保佐人の代理権の範囲に入っていたので、〇〇さんが病室に移るのを見届けた後、控室で契約書にサインをしていく。

 

契約書が書けた旨伝えに行くと、看護師さんたちの様子が慌ただしくなっていた。

 

暫くすると、医師が説明に来られた。

 

急変して、たった今亡くなられました、と。本来なら立会があるとのことだがコロナの関係で病室には入れず、控室で死亡時間を告げられた。

 

今度、病院に求められたのは、ご遺体の引き取りに関してだ。引き取りと言ってもそれは葬儀の方法に関わってくる。

 

保佐人のこれらの権限があるのか?

 

法的には、否、である。

 

また、実は、〇〇さんには特殊な事情がある。親族は兄弟のみで、諸事情から積極的なご協力が得られない。それで保佐人選任の申立も市長申立ての方法がとられていた。

 

市の担当者さん(実際は休日のため当番)と相談して、弊所がすることに。

 

法的にというより、それが最善で、緊急的で。

 

病院から紹介された葬儀屋さんと連絡をとり、ご遺体の引き取りにすぐに病院に来てくれた。

 

引き取りが決まってから1時間も経っていないかったと思う。

 

誰の目にも触れないような裏口にエンゼルケアが施された〇〇さんは看護師さん2人によって運ばれ、裏口に待っていた葬儀屋さんの車に納めれた。車が見えなくなるまで頭を下げている看護師さんたち。

 

大変なお仕事ですね、と声をかけると、コロナでなければもっと丁寧にできるのですがと申し訳なさそうな答えが返ってきた。

 

葬儀屋さんの車の後ろを自車で付いていき、葬儀屋さんで火葬の打ち合わせ。

 

〇〇さんは生活保護を受けていた。費用は最低限のもの。このことは市とも打ち合わせをしていた。〇〇さんが遺された預金の中からまず病院、施設の費用が払われる。残ったお金で葬儀代が払われるのだ。足りない部分があれば、その部分だけ生活保護で支払われることになる。

 

葬儀屋さんはとても慣れたように、事務的に手続きをしてくれた。

 

1日のうちにここまで進むとは思っていなかった。朝早く呼び出された私は正直面倒くさいなと思っていた。休日のこんな早くに、予定だってあったのに。待っているときも少しイライラしていた。

 

しかし、〇〇さんのご遺体を前にしたとき。ご遺体に寄り添っていた看護師さんを見たとき。事務的に(いい意味で)ことを運んでいく葬儀屋さんを見たとき。

 

とても恥ずかしくなりました。

 

 

~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ成年後見ブログ~

 

 

 

 

任意後見契約を解除する方法

2022年1月31日

 

認知症等の判断能力が低下した場合、本人に代わって財産管理をする法定代理人として成年後見制度が利用されています。

 

この場合、ご家族等が申立人になるケースが多いですね。

 

その申立書類の作成代理を担っているのが私たち司法書士です。

 

ご家族の希望によっては、そのまま成年後見人候補者に挙げられることもあります。

 

成年後見人は本人が判断能力が低下した場合に申立てられるわけですから、そこの本人の希望というものが反映していないことが多いわけです。

 

そこで、まだ判断能力が十分にあるうちに、いざその時が来たら後見人になる人と事前に契約を交わし、成年後見人と同じはたらきをしてもらおうというのが任意後見契約です。

 

この契約書は公証役場で完成されます。

 

そして、財産管理という重要な行為を任せる委任契約であり、そこには高度の信頼関係を前提としています。

 

また、その性質上、長いお付き合いになる長期的な契約です。

 

この契約を公証役場で交わしますと、任意後見契約の登記が、東京法務局に公証役場の嘱託でされます。

 

先ほど申し上げた通り、長期的な信頼関係を前提とした契約ですから、場合によっては事情の変化が起きる可能性があります。

 

今回、この任意後見契約を解除したい、そして別の方と契約をやり直したいというご依頼がありました。任意後見契約は亡くなった後の事務も任せる死後事務委任契約も同時に締結しておくのが一般的で、この死後事務委任契約は相続財産に影響を与えることから遺言も一緒に作成することが多いのです。

 

したがって、今回、この公正証書遺言の撤回と同時に、任意後見契約の解除手続きをさせて頂きました。

 

公証役場で別の方と任意後見契約書を交わします。

 

本人さんは以前の方と任意後見契約を解除するので、公証人はこの解除通知書も作成します。

 

あまり多くない案件なのか?公証人や事務員さんもちょっと手探り感。

 

この解除通知書の作成は全ての1番最後になり、

 

まず、同じ内容の解除通知書を5枚本人の前に並べ、この5枚全部に住所と氏名を自署させます。

 

えっ? 5枚も。。かわいそう、と心の声。

 

3枚は登記に使います。そう、任意後見契約を解除すると登記が必要になります。この場合は、公証人の嘱託ではなく、本人若しくはその代理人司法書士が行います。

 

そして、本人に公証人の前で起立が求められ、本人は、公証人に手渡された紙に書かれた文字を読み上げます。いわゆる宣誓供述です。

 

公証人も自分で求めておきながら、かなり気まずい空気が流れます。

 

これ、いる?? 再度、心の声。

 

この3枚の解除通知書を預かり、司法書士が以前の後見人に内容証明郵便を送ります。内容証明郵便は必ず同じ内容の書面3通が必要なんですね。

 

で、私も、この3通を翌日郵便局に持ち込みました。

 

「これ使えません」と郵便局員さん。

 

「本人さんが押印したものと一緒の印鑑で割印してください。」

 

内容証明に割印が必要なのは、なるほど司法書士には常識です。

 

しかし、公証役場で作られたものに改めて本人さんに割印を求めるのもどうか?と考えたが、それしかないということで再度本人さんに印鑑をもらう。

 

この内容証明を配達証明付きで送付し、この配達証明もまた登記の添付書類となる。

 

東京法務局のサイトに入り、申請書をダウンロードし、加筆して申請。

 

登録免許税はゼロ。

 

いい経験ができました。

 

本人さんのホッとした顔も印象的でした。

 

 

~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ任意後見契約ブログ~

 

 

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