本日、民事信託登記が完了しました。
最初の相談を受けたのが昨年の5月でしたから10か月ほどかかりましたね。
民事信託は、本人(委託者)が信頼できる方(受託者)に財産を託すものです。
まず信託契約書を公証人役場で認証し、それを前提に不動産に関しては信託登記をします。
依頼者さんの心配の1つは、自身の判断能力等が低下した場合に、不動産を売却できなくなってしまうということでした。
そこで受託者に売却の権限を与えておくんですね。
とは言っても、託すわけですから、受託者はその託された目的にのみ使用できます。
委託者は生前は受益者も兼ね、その利益を享受します(兼ねないこともあります)。
もう1つの心配は、判断能力が低下しないけれど、身体的に移動等が難しくなると、預貯金の出し入れも難しくなるということでした。
そこで、託された目的にしたがって、受託者が預金を管理できるようにしておくということも民事信託では実現できます。
今回、委託者は金沢在住の80代の方でした。受託者は息子さんで関東にお住まいです。
ということで、受託者が管理する信託口口座は支店の数で大手の信託銀行にしました。
そこで、信託契約書の素案は公証役場で認証されるので公証人のチェックを受けます。同時にこの内容で信託口口座がちゃんと開設できるか?信託銀行のチェックを受けます。
また、委託者の既にある複数の普通口座を解約して、この信託口口座に移す必要が最終的には必要ですから、その解約の方法もチェックしておく必要があります。
このあたりが時間がかかりましたね。
何よりコロナの影響で、面談が上手く進まなかったことが大きいですが。
それなりのボリュームのある契約書です。高齢の方にご理解頂くのは難しいです。これが民事信託の1つの壁だと思っています。
公証人による認証も、入居施設に出張して頂きました。施設の端でかなり隔離された状態で、人数も制限して、かなり時間がかかりましたが、頑張って頂いて何とか認証もできました。
以前、末期の癌の方のご依頼で、1か月ほどで作成したこともありましたが、やはり民事信託は時間がかかります。丁寧にすればするほど。
しかし、コロナの中で、リモートだったりを駆使して、場所的な制限を超えてご相談にのれるようになったのは大きな変化と言えるかもしれませんね。
先日、民事信託の研修で、こんな話で締めくくられていました。
民事信託は確かに難しい。
いい加減にすると、依頼者さんに不利益も生じ、ある意味怖い。
でも、
それが有益な方法であるなら、司法書士は恐れず、相談者さんに提案していかなければならない、と。
同感です。
初めから民事信託を薦めるわけではありません。
お話を聞かせて頂いて、その方の不安の解消に民事信託が有用を判断すれば、提案いたします。
お気軽にご相談ください。
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