医療法人と理事長の不動産売買

2020年7月8日

法務局から電話がかかってきた。

 

うちの司法書士くんが頭を抱えて、声のトーンが落ちていく。

 

「確認して折り返します」と、電話を置く。

 

本棚に向かっていき、分厚い六法を手に取り、パラパラとめくっていく。

 

デスクに戻ってきて、何やらググっている。

 

「何? どうしたの?」と尋ねると、

 

「医療法人〇〇の不動産売買の件で、県の特別代理人選任の許可証をつけなくていいの?と法務局が言ってきたんですが」

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

「何それ?」 私

 

申請中の不動産登記に、医師個人から同人代表の医療法人に不動産の所有権を移転した登記がありました。

 

こういうのを利益相反って言います。

 

よくあるのは、代表取締役個人から会社に不動産の所有権移転。

 

こういう場合、取締役会議事録や株主総会議事録を付けていくんですね。ゆえに、今回も、医療法人の理事会議事録を付けていきました。

 

自信満々で。何の疑いもなく。

 

それを、特別代理人選任って何だ? しかも県の許可って。

 

調べると、確かにその制度はあったんだけれど、平成28年に廃止されている。

 

今は、先の通り、理事会議事録を添付すればよい。

 

ホッとして、司法書士くんに言う。

 

「法務局にガツんと言ってやったらいいよ。その制度、廃止されてますよ。理事会議事録だけでOKでしょ!!」と。

 

受話器をとり、力強くリダイヤルする司法書士くん。

 

「その制度は・・・」

 

「では、お願いします」 ガチャ。

 

「どうだった?」

 

「古い六法見てたそうです」(苦笑)

 

・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・

 

「おいっ」

 

もし、今回、法務局の指摘通りだとしたら、おそらく取り下げることになったであろう。それは不動産売買にあって、司法書士としては許されないミスである。

 

胃がキュンとくる、チクッとする。

 

「勘弁してよ」と、既にホッとしているので、大笑いした。

 

 

 

~石川県金沢市の司法書士が繋ぐ不動産売買ブログ~

 

解散会社の抵当権抹消登記

2020年5月22日

では、昨日のつづき。

 

不動産を売りたいのに、その登記簿を見ると抵当権がついている。

 

このままでは現実には売れない。

 

その抵当権者が解散(清算結了)した会社だった場合の話。

 

会社登記の話になるが、会社が解散する場合、清算人を選任しないといけない。通常は代表取締役がそのまま清算人となる。

 

で、抵当権を抹消する場合、この清算人と連絡がつくかどうかがポイント。

 

以前、連絡がつかないケースの登記をしたことがある。

 

方法は、管轄裁判所で清算人を選任してもらう。この登記のためにだけ選ばれるスポット清算人。この人にも報酬を払わないといけないので、そこそこ費用がかかる。

 

その申立ても司法書士の業務。

 

なので、今回もこれかな、と思っていた。依頼者さんかわいそうだなって思っていた。

 

思っていた、というから結論は推量できるでしょう?

 

そう、清算人だった人と連絡がついたのだ。

 

ダメ元で、郵便を送ってみた。

 

すると、清算人だった社長さんから電話があったのだ。

 

書類を送ってくれたら印鑑押すよ、と。

 

そうなんです。司法書士が作成した解除証書に清算人だった方が実印で押印して印鑑証明を付けてくれればそれだけで抹消できるんです。

 

これは、抵当権の登記済証(登記識別情報)がないケースで、いわゆる事前通知という方法なんですが。

 

清算人だった方のご協力が得られれば簡単に消せるんです。古い抵当権も。

 

実際、押印書類を郵送すると、すぐに返送してくださいました。

 

添え書きに、ご迷惑をおかけしてすみませんという言葉と一緒に。

 

会社をたたむ(清算する)ときには、やむにやまれぬ事情があったそうです。

 

それから20年近くたった今でも、ご迷惑をおかけした方がいるんだという思いを持ち続けていることに、頭が下がります。

 

会社を経営するってそういうことなんだなって思いますね。自身だけで経営はできない。それを支えてくれている従業員、取引先、お客さん。

 

もし会社に何かあったら、この人たちに迷惑をおかけしてしまう、という思いが経営者の肩にのっかってるんだなって思いますね。

 

 

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