遺産分割協議と債務引受と贈与税

2017年8月22日

借金も相続の対象、と聞いたことある人も多いと思います。

 

では、借金は遺産分割協議の対象となるのか?

 

この問いには、丁寧に答える必要があります。

 

借金は、債務は、相続人が法定相続分に従って分割して相続します。

 

それを長男が男気をみせて、俺一人で払うから心配するなと遺産分割協議の中で決まったとします。

 

これだけでは長男だけが債務を負うことにはなりません。

 

銀行等の債権者が黙っていないからです。そりゃそうですよね。長男さんに支払い能力がなかったら、債権者としては債務者が1人になることはリスクでしかありませんから。

 

したがって、債権者が同意してくれたときだけ、借金は遺産分割協議の対象となるのです。

 

 

これ、司法書士が関わる登記でいいますと、抵当権の債務者変更登記に関わってきます。

 

遺産分割協議で長男が一人で引き継ぐと決め、銀行も同意してくれますと、相続を原因として(日付は死亡日)、抵当権変更登記ができます。

 

遺産分割協議せずに分割で相続することが確定し、後日、相続人間で長男に引き継がせるという同意があった場合、相続を原因とする(日付は死亡日)抵当権変更登記をして、次に債務引受を原因とする(日付は引受日)抵当権変更登記の2件の登記が必要になってきます。

 

これね、

 

抵当権変更登記って登録免許税は不動産1つにつき1000円だから、不動産の数がそれほどでなければ、遺産分割協議の際に債権者が同意してくれたかどうかって大したことないんですよ。登記に関しては。

 

でも、税理士さんと話をしていると、おやっ?って。

 

相続を原因として債務を承継するのか? 債務引受を原因として債務を承継するのか?で、税金が違ってくる可能性があります。

 

前者だと相続税の考え方で済みますが、後者だと相続の後で贈与税のことを考えないといけなくなります。

 

最終的に債務を負わずに済んだ人は、相続ではなくて当事者間の同意で債務を引き受けてもらった訳ですから、実質贈与です。

 

お父さんが6000万円の借金を残して亡くなり、長男次男が相続人だとして、長男が債務引受を原因として債務を承継したとなると、長男から次男への3000万円の贈与です。

 

次男の贈与税を考えると、怖いですね。

 

僕ら司法書士が、この登記が1件でできるか? 2件必要か?と考えている後ろにはもっと大きな税金のことが潜んでいたりするんですね。

 

遺産分割協議、もちろん調停だってそう。

 

結論を出す前に、税理士さんのアドバイスが欠かせません。

 

 

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相続放棄と傷病手当金

2017年7月28日

本日最後は、相続放棄のご相談。今日すぐに相談したいということで、時間を確保。

 

被相続人が亡くなってまだ1週間も経っていない。

 

相続財産は多くなく、逆に銀行さんにカードローンの借金が数百万あるそうです。

 

相続放棄は、相続人としての地位そのものを放棄する制度、家庭裁判に申述する必要があります。

 

こういう借金があることが分かってから3か月以内に申立てる必要があります。

 

ただ、今回、傷病手当金が受け取れると聴いたそうで、そのことと相続放棄について聴きたかったそうです。

 

傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

 

被相続人が受け取っていない部分があるのであれば、相続人が手続きをとれば受け取れます。

 

相続放棄は、相続人としての地位そのものを放棄する制度で、相続する意思を示すような行動を取ると、相続放棄の手続きが取れなくなります(単純承認)。

 

相続人が傷病手当金を受け取る手続きをとることは、この単純承認に当たります。

 

生前、傷病手当金を受け取っていたということであれば、受け取っていない部分というのはそんな高額にならないと思われますが、借金の額と比べる必要がありますね。

 

今回、少額であるということを既に把握されていらっしゃったので、相続放棄をする方向で進めるそうです。

 

相続放棄は家庭裁判に申述する制度ですから、司法書士の業務です。

 

しかし、その手続き自体はとてもシンプルなので、一般の方でも十分できます。

 

したがって、当事務所では、相続放棄の手続きの流れを大まかに説明して、ご自身でやってみることをお薦めしています。

 

相続財産に借金が多い場合にとられることの多い制度ですから、あまり費用をかけたくないという心理も理解できますしね。

 

どうしても難しいとか、面倒という方は引き受けております。

 

ただ、一度チャレンジしてみて、と言って、難しかったからお願いという方は今のところいません。

 

当事務所で受任することの多いケースは、3か月の期限が迫っていたり、かなり高齢の方の場合です。

 

もっとも、相続放棄すべきかどうかはとてもナイーブな問題なので、司法書士に相談することをお薦めします。決して、一人で判断しないでくださいね。方針が決まったら、ご自身でやればいいんです。

 

うちは相談料も取りませんが、たとえ取られたとしても、結果損ではないと思いますよ。

 

今日の相談者さんも、不安に思っていたことを全部聴けたってとても喜んで下さいました。

 

いい仕事だな。

 

司法書士って。

 

 

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